陰萎(インポテンツ、ED)

背景・疫学

陰萎(以下、ED)は「性交時に十分な勃起が得られないため、あるいは十分な勃起が維持できないため、満足な性交が行えない状態」と定義される。バイアグラなどの普及により、EDの治療もオープンになったが、成人男性の10~15%がEDを含む性機能不全に該当するといわれている。加齢や病気などによる身体的原因と、ストレスなどの心理的原因のふたつに分かれ、いずれの原因であっても、血流の低下が起こり、性機能不全の状態が続くと、しだいにペニスの血管が収縮して筋肉細胞も萎縮してしまう。そうなると、勃起はより因難になり、さらに精神的ダメージが重なり、失敗から怖れが生じ、最終的には性欲も性に対する興味も失ってしまうことになっていく。

原因

身体的な原因と心理的な原因に分けられる。

身体的な原因

ひとつには、尿道下裂など陰茎の変型があげられる。また、脳卒中や頭部外傷、脊髄損傷、骨盤内臓器の手術後などの神経系の障害によるもの。陰茎の血管の狭窄などによって血流量が減ることで起きるもの。脳下垂体や副腎、睾丸などのホルモンを分泌する器官の障害によるものなど、様々。
また、避けることのできない原因のひとつに老化がある。精子をつくる機能は30~40歳頃から老化が始まり、ホルモンをつくる機能も低下する。それに伴い、個人差はあるが、勃起能力や射精能力は次第に減少するため、勃起力も弱まっていく。

心理的な原因

性知識が乏しいうちの性行為の失敗や、早漏などにより、その後の性交に対して恐怖感をもってしまい、性的欲求があっても挿入時に萎えてしまい、うまくいかない場合がある。このように、自信喪失からEDなってしまうもの。また、仕事や生活環境などで激しいストレスに長期間さらされると、副交感神経やホルモン分泌に影響が及び、性欲が阻害されて起こるものがある。
うつ病や自律神経失調症などの心身症では、性欲そのものが減退したり、自律神経の調節異常などにより勃起が起きにくくなり、また心理的なバイアスも相まってより症状が長引いてしまう事もある。

一般的治療法

原因によりさまざまな治療法が用いられる。

心理療法、カウンセリング

心理療法の一つとしてノンエレクト法がある。これは勃起を禁止することで性行為時の勃起に対するストレスを取り除く方法の一つである。機能性(心因性)勃起機能障害の患者さんが適応となる。

薬物治療

機能性、器質性勃起障害の両方の場合に適応になります。現在ではバイアグラやレビトラ、シアリスを使用した治療が中心で、効果としては約7~8割とされる。これらの薬剤は陰茎海綿体平滑筋を緩める作用を増強させ、海綿体の血液貯留をうながすことで勃起を起こしやすくする薬となる。

男性ホルモン補充療法

加齢にともない男性ホルモンが低下し性欲低下を含めた勃起機能障害の患者さんに適応となる。注射による男性ホルモンの補充を行う。
このほか、陰茎に勃起を起こさせる薬を陰茎海綿体に注射する方法なども取られる。

メディカルジャパン東洋医学的アプローチ(心因性)

自律神経の調整、精神・心理面の安定
勃起、勃起抑制を支配する自律神経下位中枢と関係する仙骨部、腰部、下腹部などのツボや圧痛、硬結などの反応点に施術します。
【処方例】
腰部 : 腎兪
仙骨部 : 次髎(じりょう)、中髎(ちゅうりょう)
下腹部 : 中極

参考文献