冷え性

<背景・疫学>
手や足などの四肢末端あるいは上腕部、大腿部などが温まらず、冷えているような感覚が常に自覚される状態のこと。
病態としての定義づけはなされていない。
性別では女性に多いが男性でも冷えの訴えはあり、一般人(男64名女89名)を対象とした調査では、男性26.6%、女性 55.1%が冷えを自覚し、女子大学生においては、約半数が冷え性群であり、36%程度が冷えが苦痛に感じているとする報告もある。一方、男女差は無いとする報告もある。
1980年代に行われた調査では、調査対象者の約40%が何らかの冷え症状を訴えており、思春期後期の19.3歳±5.1歳で発症していると報告されている。

<原因>
遺伝、持病の病態の一つ、生活習慣などいくつかの要因が複合していると考えられている。
遺伝的な要因としては、進化の過程で飢餓への対抗手段として獲得した代謝を低下させる倹約遺伝子と呼ばれる機能のうち β3-AR 遺伝子変異が引き起こす交感神経反応の低下と報告されている。

疾病の病態としては、性ホルモンの変動とそれに伴う自律神経バランスの乱れが考えられる。体温は自律神経によってコントロールされており、産熱と放熱のバランスで体の中心温度を保っている。

間違った食習慣も冷え症の原因になる。例えば、ダイエットのため摂取カロリーのみを重要視する偏重した食事となり、炭水化物を排除し野菜のみの食事となったり、逆に炭水化物主体となり野菜、タンパク質、ビタミン、ミネラル、脂肪などの摂取不足から栄養失調を生じるためである。冷え性を訴える群には、『朝食抜き』『ダイエット中』『塩分や脂肪分の摂取が多い』とする報告がある。また、不規則な生活リズム、食事、薄着も影響を与えていると指摘されている。
食事誘発産熱といい、食事をすることで熱を産生する機構が人体にはあるが、朝食を抜いた場合ではより低下しやすいことがわかっている。

<一般的治療法>
冷え性は、生活習慣病の側面があるため、生活改善することである程度の予防・改善をすることが可能であり、様々な民間療法や俗説が存在している。
西洋医学では冷え性は一般には病気と見なさない場合が多く、あるいは自律神経失調症、症状によっては手指が白くなるレイノー病と見なされるが、漢方医学では冷え性を未病、病気のサイン、重大な病気の誘因になると考える。体質や性別、症状により以下のような漢方薬の処方が代表的である。
桂枝加朮附湯、桂枝茯苓丸、補中益気湯、大建中湯など。