正しくは、三叉神経痛

世間一般には、顔に起こった痛み=顔面神経痛と言われがちですが、正しくは三叉神経痛と言います。そもそも顔面神経には痛みを感じる痛覚がないため、痛みの発生=三叉神経関与の病態となります。
主に50歳代以降の人にみられることが多く、中でも男性よりも女性に多い傾向があるとされます。
三叉神経痛は典型的三叉神経痛、特発性三叉神経痛、症候性(二次性)三叉神経痛の3つがありますが、多くの方は典型的三叉神経痛に分類されます。

三叉神経とは

三叉神経は、顔面の感覚を司る感覚神経と、咀嚼筋の運動を司る運動神経からなる混合神経です。三叉神経は、下記の他に、口腔、鼻腔、副鼻腔、歯、硬膜の感覚も司ります。

※運動神経として機能するのは、第3枝の下顎神経のみです。

三叉神経核は4つあり、それぞれ機能が異なります。

三叉神経の末梢部での支配領域は左下図のように分かれています。しかし、温痛覚の点においては他と異なり、右下図のような分布をしています。

原因

発症原因の1番多い典型的三叉神経痛は、主に頭蓋骨内にある血管によって三叉神経が圧迫されることで発症します。圧迫された神経は髄鞘(神経を覆う物質)が障害を起こした状態(脱髄)になり、異常な神経の働きをすることで痛みが生じると考えられています。
原因不明の三叉神経痛は特発性三叉神経痛とされ、明らかな原因になる病態が存在する症候性三叉神経痛とに分けられます。症候性三叉神経痛の原因病態には、多発性硬化症、脳腫瘍、脳血管障害、歯髄炎などがあります。

症状

典型的三叉神経痛は、鋭く我慢しがたい痛みが数秒〜数十秒発作的に生じるのが特徴です。しかし、時に10~20分程度続く場合があるほか、1日のうちに何度も痛みが繰り返されることもあります。また食事や洗顔、歯磨きなどの刺激や顔などを触ることによって痛みが誘発されることが多いのも特徴の1つです。

痛みは、上顎や頬・上唇などの感覚を支配する上顎神経(第2枝)部位や、下顎や下唇・舌・咀嚼筋などの感覚を支配する下顎神経(第3枝)領域の部位へ高頻度に発生します。

症候性(二次性)三叉神経痛の場合でも鋭い痛みを生じますが、これに加え感覚の異常をはじめとする他症状を伴う傾向にあります。痛みが反復されることから、多大なストレスを受け円滑な日常生活を送れなくなる場合もあります。

一般的治療

三叉神経痛の治療は、薬物療法や神経ブロック療法、手術療法、ガンマナイフ療法などがあります。まずは体への負担が少ない薬物療法からはじめ、効果が得られなかった場合は手術などが検討されます。

薬物療法の、第1選択薬は抗てんかん薬のカルバマゼピンです。神経痛が内服薬でコントロールできない場合には、痛みの元となっている神経に対して神経ブロック療法を検討します。そのほか、神経の圧迫が原因となって痛みが生じている場合には、圧迫軽減を目的とした手術が検討されることもあります。手術でも効果が得られない場合や何らかに理由で手術ができない場合には、ガンマナイフ療法も検討されます。

予防法

三叉神経痛の具体的な予防方法は、まだ分かっていません。
ただ、典型的三叉神経痛の場合、動脈硬化によって血管が固くなると三叉神経をはじめ、脳神経を刺激する原因になることがあります。そのため、バランスのよい食事や適度な運動、質のよい睡眠などにより生活習慣を整え、動脈硬化を予防することで三叉神経痛も予防できる可能性があります。

メディカルジャパン東洋医学的アプローチ(特発性の場合)

明らかな原因がわからない特発性三叉神経痛の場合、頭痛誘発部位(トリガーゾーン)があり、その中でも特有の圧痛点(トリガーポイント)が存在することが多々あります。そのトリガーポイントを参考に、鍼での治療点を選択します。

【処方例】
第1枝:眼窩上孔部、前頭切痕部…魚際
第2枝:眼窩下孔部…四白
第3枝:オトガイ孔部

メディカルジャパン西洋医学的アプローチ

発作的に発生した痛みに対しての即時的な治療を行うことはなかなか難しいですが、神経の興奮を抑える治療が有効です。
当院では、立体動体波をはじめとする9種類の多彩な電気刺激モードを搭載した伊藤超短波株式会社の総合刺激装置ES-530内の以下Hi-Voltage モードを使用し、神経の過剰興奮を抑制させ、三叉神経痛の治療を行っております。

Hi-Voltage モード[高電圧電気刺激療法]

高電圧の刺激が深部に浸透。疼痛の軽減、治癒促進などに利用できます。

さらに、国際特許取得の低・中・高周波成分を含んだ電気刺激と超音波を組み合わせ深部疼痛の治療を行うテクノリンク社製アストロンでの治療も行っております。
上記のような、神経への直接的アプローチに加え、神経の圧迫軽減を目的としたマッサージ、整体、姿勢改善など、複数の治療を症状や状況にあわせてカスタマイズしておりますので、今現在行なっている治療とは異なる治療法の開拓をご希望の方や、治療方法にお困りの方は、是非一度ご相談ください。

参考文献

病気が見えるvol.7、脳・神経、三叉神経痛、P246、株式会社メディックメディア