ダイエットのための栄養指導

ダイエットを進めていく中で、食事管理は欠かせない存在です。カロリーコントロールを意識したメニューにすることは、誰しもが思いつく方法ですが、カロリーを意識しながら、必要な栄養素を過不足なく取り入れていくことは容易ではありません。そもそも、自分の一日の活動量がどれくらいなのか、考えたことはあるでしょうか?活動量だけでなく、年齢、性別 に応じて、必要なエネルギー量は異なります。自分自身の状況を分析し、明確な数字を認識することで無駄なく、そして無理のないダイエットを行いましょう。

あなたの現状は把握できていますか?

まずは、年齢に応じたエネルギー(カロリー)摂取必要量を把握することです。(上図)その上で、自身の活動量に応じた身体活動レベルの理解が必要です。多くの方は、『ふつう』レベルとされていますが、デスクワークが多い現代においては、『低い』レベルとなる方が多いのが現状です。

高い 立ち仕事や移動が多い仕事、または活発な運動習慣を持っている人
普通 座り仕事が中心だが、軽い運動や散歩などをする人
低い 一日のうち、座っていることがほとんどの人

5大栄養素+食物繊維

●糖質(炭水化物)…1g=4kcal

エネルギーになる栄養素の中で最も重要なものです。日本人の一般的な食事では、摂取エネルギーの 60%前後を糖質で得ています。糖質はエネルギーとして使われるほか、脂質の代謝にも関与しています。余った糖質は、グリコーゲンや中性脂肪に形を変えて体内に貯蔵されます。


●たんぱく質…1g=4kcal

たんぱく質は多数のアミノ酸がつながったもので、生体のたんぱく質は約20種のアミノ酸からできています。中でも、体内に必要にも関わらず自身で生成できないものを必須アミノ酸といいます。体中に摂り入れられたたんぱく質はアミノ酸に分解され、筋肉、皮膚、毛髪、爪、臓器、神経などの細胞組織の成 分、酵素、ホルモン、免疫物質、筋収縮や輸送に関与する物質など、それぞれの働きに必要なタンパク質に生合成されます。

また、糖質の摂取量不足時は、分解されてエネルギーとして消費されます。このため、糖質の不足はたんぱく質の本来の機能を奪うことになります。


●脂質…1g=9kcal

少量で高カロリーの効率のよいエネルギー源で、エネルギーの貯蔵にも役立っています。その他、細胞膜を構成する、身体の機能や生理作用を一定に保つ、食品の脂質部分に含まれる脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の供給源となる、などの働きがあります。
血液中に含まれる脂質には脂肪酸、中性脂肪、コレステロール、リン脂質の4つがあります。

脂肪酸

脂肪酸は直接エネルギー源として使われる他、血圧調節、血液凝固、免疫機能などのさまざまな調節機能に関わる物質の材料や生体膜の構成成分となります。脂肪酸は構造の違いで飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられ、不飽和脂肪酸のうち、リノール酸、リノレン酸は正常な発育や機能の維持に不可欠でありながら体内で合成できないため、食事から摂取しなくてはならず、必須脂肪酸と呼ばれています。一般的に、脂質の摂取は飽和脂肪酸に対して不飽和脂肪酸、1:2の割合が望ましいとされています。

代表的な脂肪酸とその特徴
分類 脂肪酸名 多く含む食品 特徴
飽和脂肪酸 パルミチン酸 動植物油に広く分布 融点が高く、常温で固体。とりすぎると肝臓でのコレステロールの形成を促進し、血液中のコレステロール濃度を上昇させる。
ステアリン酸
飽和脂肪酸 オレイン酸 動植物油に広く分布 融点が低く、常温で液体。血液中のコレステロール濃度を低下させる働きがあり、動脈硬化の原因となる血栓の形成を防ぐ。
※過剰な場合、動脈硬化やアレルギー反応などに悪影響を与える可能性も。
リノール酸 植物油一般
リノレン酸
アラキドン酸 動物性油脂
エイコサペンタエン酸(EPA) 魚油
ドコサヘキサエン酸(DHA)
中性脂肪

中性脂肪はエネルギー源である脂肪酸の貯蔵形態で、食事から摂取する脂質の大部分を占めます。必要に応じて分解されてエネルギーとして使われます。

コレステロール

ホルモンや胆汁酸の材料になるほか、脳や神経などの細胞膜の構成成分となります。体内のコレステロールのうち約3割は食事から、残り7割は体内で合成されたものです。

リン脂質

リン脂質は細胞膜や脳の組織の構成成分となります。


●ミネラル(無機質)

人間の身体は約60種類の元素で構成されており、主要元素と呼ばれる水素(H)、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)が約95%を占めています。その他の元素を総称してミネラルといいます。特に栄養素として不可欠な16種類を必須ミネラルといい、骨や歯、筋肉や血液などの成分となるほか、さまざまな生理作用に関わっています。ミネラルは体内でつくることができないため、食べ物からとらなければなりません。
ミネラルの不足はさまざまな機能の障害を招き、骨粗鬆症や貧血、筋力の低下、味覚障害などの疾患を引き起こすことがありますが、反対に過剰になっても障害をもたらします。

必須ミネラルを含む代表的な食品とその働き

分類 ミネラル名 多く含む食品 働き
必須ミネラル 主要元素 ナトリウム 食塩、みそ、しょうゆ 浸透圧の維持、pHの調節、水分平衡の維持など
塩素 食塩、みそ、しょうゆ 浸透圧の維持、pHの調節、胃液の塩酸成分となる
カリウム いも類、野菜類、果物類 エネルギー代謝、浸透圧・pHの維持、血圧調 節、神経刺激の伝達、電位差の維持、水分保持など
カルシウム 牛乳・乳製品、小魚、海藻類、大豆 製品、野菜類 骨・歯の主成分となる血液凝固、筋肉の収縮、神経の興奮抑制などに関与
マグネシウム 食品中に広く分布。特に緑黄色野菜や海藻類などの植物性食品 エネルギー代謝、筋肉の収縮、神経機能、ホルモン分泌、体温調節など
リン 食品中に広く分布 食品添加物など 骨・歯の成分、細胞の構成成分となる。エネルギー代謝、体液の浸透圧、酸塩基平衡の調節など
イオウ たんぱく質を含む食品に広く分布 含硫アミノ酸の構成成分(毛髪や爪の構造たんぱく質)となる
微量元素 レバー、貝類、卵黄、緑黄色野菜、ひじき 浸透圧の維持、pHの調節、水分平衡の維持など
亜鉛 かき、肉類、小麦胚芽 酵素の構成成分、核酸代謝、細胞分裂に関与
野菜、穀物(特にピーナツ類)、肉類 酵素の構成成分、鉄の吸収・貯蔵の促進、成長促進、免疫機能など
マンガン 穀類、種実、野菜類、抹茶 酵素の構成成分、骨形成
コバルト 葉菜類、肉類、臓器類 補酵素、ビタミンB12の成分となる
クロム 食品中に広く分布。野菜、穀物、 肉、魚など 糖代謝、脂質代謝に関与
ヨウ素 海藻類、貝類 甲状腺ホルモンの構成成分となる
モリブデン 乳製品、豆類、穀類、レバー 補酵素となる
セレン 魚肉、獣鳥肉、小麦、大豆 酵素の構成成分となる、抗酸化作用

※食事からの摂取量が1日当たり100mg以上のものを主要元素、100mg以下のものを微量元素と分類


●ビタミン

糖質、脂質、たんぱく質の代謝を助け、生命維持のための生理作用に不可欠な栄養素です。ビタミンには脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンの2種類があります。脂溶性ビタミンは脂質と一緒に体内に貯蔵することができますが、水溶性ビタミンは体内に貯蔵できる日数が脂溶性ビタミンに比べ短いため、不足しないようこまめに摂取することが必要です。またミネラルと同様、さまざまな生体反応に関わっているため、不足や過剰摂取により多くの機能障害を起こします。

各種ビタミンを含む代表的な食品とその働き

分類 ビタミン名 多く含む食品 働き
脂溶性ビタミン ビタミンA
(カロチン)
レバー、卵黄、牛乳・乳製品、緑黄色野菜、魚など 網膜で光を関知する物質の成分となる。成長の促進、皮膚粘膜の形成など
ビタミンD 卵黄、脂肪の多い魚、牛乳・乳製品、きのこ類など カルシウムの吸収・骨形成の促進。ホルモン分泌の調節、免疫の調節など
ビタミンE 食品中に広く分布。特に植物油、種実類、小麦胚芽など 抗酸化作用など
ビタミンK 食品中に広く分布。特に緑葉野菜、植物油、豆類、海藻類など(腸内細菌による生合成もあり) 血液凝固に必要な物質の生成に関与。骨形成の促進など
水溶性ビタミン ビタミンB1 豚肉、玄米、豆類、内臓類など 糖質の代謝などに関与
ビタミンB2 レバー、卵、牛乳・乳製品、緑黄色野菜、豆類など(腸内細菌による生合成もあり) 糖質、たんぱく質、脂質の代謝のほか、さまざまな酸化・還元作用に関与
ナイアシン 食品中に広く分布 特に魚介類、肉類、藻類、種実類など 多くの酸化・還元作用に関与
ビタミンB6 食品中に広く分布。特に種実類、穀類、肉類たんぱく質の代謝に関与など(腸内細菌による生合成もあり) たんぱく質代謝に関与
ビタミンB12 レバー、肉類、魚肉、貝類、卵、牛乳・乳製 品など(腸内細菌による生合成もあり) 核酸の合成などに関与
葉酸 豆類、緑黄色野菜、レバーなど 核酸合成、たんぱく質代謝、赤血球の生成 に関与
パントテン酸 食品中に広く分布 特にレバー、酵母、卵黄、豆類など(腸内細菌による生合成もあり) 糖質、脂質、たんぱく質代謝に関与。コレステロール、免疫抗体などの生成に関与
ビオチン 食品中に広く分布。特にレバー、豆類、穀類、卵黄、ローヤルゼリーなど(腸内細菌による生合成もあり) 脂質の代謝などに関与。皮膚や神経組織、甲状腺などの機能を正常に保つなど
ビタミンC 柑橘類、緑葉野菜、いも類 酸化・還元反応、代謝などに関与、抗酸化作用
※最も多く必要とされるビタミン

●食物繊維

食物繊維は、人の消化酵素で消化されない食物中の成分の総称です。食物繊維の多い食べ物は自然とかむ回数を増やし唾液の分泌をうながすほか、少量で満腹感が得られ、食べすぎの防止に役立ちます。同時に、小腸での糖質の消化吸収をゆるやかにするため、血糖の上昇が抑えられて糖尿病 の予防につながります。また、コレステロールや胆汁酸を吸着するものもあり、血中コレステロール値も抑えることができます。

食事バランス

あくまで平均的な1日の食事バランスです。年齢・性別・身体活動量によって、コマの大きさは異なります。

初めから1日のバランスを完璧にすることにとらわれるのではなく、3~4日、もしくは1週間といった一定期間を目安に、食生活のバランスをチェックするようにしましょう。

上記は、一日の活動レベルに応じた一日の摂取目安量です。『1つ、2つ』という数え方は、農林水産省で提案されている「食事バランスガイド」独自の数え方です。基準となる「つ」量を理解することで、あらゆる料理を「つ」に換算することができます。

主食
副菜
主菜
牛乳・乳製品
果物

メディカルジャパンでの介入例

思い込みのダイエット食は健康に悪影響を及ぼす可能性があります。ダイエットの食事管理には幅広い知識と経験が必要です。豊富な知識と実績を持つ専門家として、個々の健康状態や目標、ニーズに合わせた最適な食事管理による、健康的で継続可能なダイエットをサポートいたします。

参考文献

感覚器系

聴覚に関連する症状
視覚に関連する症状
嗅覚および鼻に関連する症状

婦人科系

妊娠・出産に関する症状
月経・ホルモン関連